PERSON 人を知る

徳永健さん
INTERVIEW

デザインで、もっと、愛と感謝を

株式会社クラウドボックス 代表取締役

徳永健 KEN TOKUNAGA

株式会社クラウドボックスの紹介

吉祥寺のデザイン会社「クラウドボックス」の代表取締役、ご当地かるたプロデューサーの徳永さん。
劇団員、イラストレーター、ライターなど様々な経験を経て、ご当地かるた『吉祥寺かるた』を制作し、2021年度グッドデザイン賞を受賞されています。

  • 吉祥寺

interview インタビュー

Q1:周囲からどのようなイメージを持たれていると思いますか?その理由はなぜですか?

飄々としているとよく言われ、どちらかというとふんわりしたイメージを持たれているようです。家族や会社のメンバーなどの身近な人からは、理屈っぽいけど頭が硬いわけではないと言われます。僕は小さい頃から怖いもの知らずというか、少しでも気になるものがあるとそのことばかり考えて行動してしまうようなところがあります。今も、面白いと思ったことはすぐ行動してしまうので、そんなイメージを持たれているかもしれません。常に選択肢をいくつか持っていたいので、「こうじゃなきゃだめ」というルールは自分の中に基本的に作らないようにしています。これは家庭でも会社でも実践していて、自分がこれだと思ったことに対しては突き進んでしまうので、奥さんからはマイペースで頑固だと思われているかもしれませんね(笑)。

Q2:そのイメージは自分が望むイメージと近いですか?

そうですね。僕の望むイメージと周囲からのイメージに大きな差異はないと思っています。「一般的にこういうもの」といった世の中のいわゆる「常識」をまず疑ってみたり、自分が「こうだ」と思ったら突き進むという面では自分の望むイメージと近いです。これは会社のメンバーもよくわかってくれていると思います。

Q3:自分が望む、他者に与えたいイメージはどのようなイメージですか?

「愛と感謝と好奇心」という言葉が僕の中では大切なものとして常にあって、周囲からも、この言葉を大切にしながら行動しているんだなと思われたいです。好奇心という面では、行き当たりばったりならぬ、「行き当たりばっちり」というフレーズをモットーとして行動していて、一つのゴールを決めてそれに向かって突き進むよりは、その時見えている景色に対して一つひとつ判断して対応するようにしています。寄り道をしたとしても「結果オーライ」になればいいと考えているので、このフレーズが好きなんです。周囲にもそんなイメージが伝わっているといいなあと思います。

徳永健さん

Love

Q1:「愛を伝える」と聞いて、自分にとっての愛は何ですか?

僕の会社のミッションは、「デザインで、もっと、愛と感謝を」という言葉なんです。これは言い換えれば「伝えることで、笑顔と好きとありがとうの循環を広げていく」ということです。だから、「愛を伝える」という言葉はまさに僕が仕事をしていく中で一番大事にしていることだと言ってもいいと思います。その考えを大切にするようになったのは、今の会社を始めた15年前くらいからで、当初は何を基準に仕事を選んでいくか迷いがあったのですが、「愛と感謝」という言葉が自分の中にはっきりしてからはその迷いがなくなりました。今は、極力「愛と感謝」、つまり「笑顔と好きとありがとう」が広がるような仕事だけをやれるような会社になっていきたいと思っています。

Q2:わざわざ人には言わない、自分の「こだわり」はありますか?

僕の1番のこだわりは、とりあえず挑戦してみるということです。先程の「行き当たりばっちり」とも若干かぶるんですが、座右の銘を聞かれたら「流水不腐」という言葉を答えています。これは文字通り「流れる水は腐らない」という意味です。僕は、物事は現状維持に努めようと思った時点で腐り始めてしまうと思っていて、たとえどう流れていくかわからなかったとしても、とりあえず流れは止めずに動き続けたいと思っています。常に好奇心を持って、新しいものや関心のあるものを見つけるためのアンテナ、燃料は持ち続けていたいですね。
先ほど愛と感謝の循環を広げるという話をしましたが、ここで「循環」という言葉を使っているのも、その「流れを止めない」という考え方と共通しているかもしれません。とにかく、愛を受け止めたらそれを次に伝えて、受け渡していく。それをひたすら続けることで、いつかまた自分の背中に愛が戻ってくる。そんなイメージです。完成形を目指すのではなく、循環させ続けることが、僕のこだわりです。

Q3:現在「愛」が一番向いている関心ごとはなんですか?

最近は、人の「偏愛」に関心を持っています。例えば、アイドルを好きな人は何千人、何万人といますけど、そのアイドルの何が好きかは人によって違っています。「好き」の種類は何万種類もあるんです。その、その人だけの好き、つまり「偏愛」が垣間見える瞬間が僕は好きなんです。そして、自分の「偏愛」を大事にしている人は、他人の「偏愛」も大事にできます。「偏愛」を持った者同士が集まると、互いの「偏愛」が共有され、それぞれ違うがゆえに相乗効果を起こして共感が爆発するようなことが起きたりします。偏愛が渦を巻いて竜巻みたいになって、そのコミュニティの熱を盛り上げていく。そんな「偏愛がつくるコミュニティ」の仕組みなんかにも興味を持っています。

Q4:「偏愛」に関心をもったきっかけはなんですか?

『吉祥寺かるた』という商品を作ったことがきっかけです。このかるたは、読み札の内容をSNSで募集したのですが、その人だけにしかわからないような「好きの瞬間」や、その人だけが感じられる「ハッピー」がたくさんあることに気付かされました。例えば「このお店では必ずこの歌手の曲が流れている」だったり「このお店の大将がさりげなくサービスしてくれる瞬間が好き」だったり。「吉祥寺のここが大好き!」と思う瞬間は人それぞれみんな違っているのに、それを集めてカタチにしたら、ひとつの「みんなの大好きな吉祥寺」という姿が現れたということに面白みを感じました。

徳永健さん

Action

Q1:今までどのような活動をされてきましたか?

僕の経歴はかなりメチャクチャなのですが、何かを表現して「伝える」ということでは一貫しています。学生時代は友人と劇団を作って演劇に夢中になり、並行してバイトでイラストレーターもやっていました。大学を中退した後もしばらくは演劇とイラスレーターを同時に続けて、30歳過ぎまでは劇団を主宰していました。その後はフリーランスとして、イラストを描いたりライターをしたり小説を書いたり、さまざまな経験をしました。イベントプロデューサーや映像ディレクターなんかもやりました。基本的には「これできる?」と聞かれたら全部「できます」と答えて引き受けてましたね。その中で、徐々にグラフィックデザインやウェブデザインといった仕事が増えてきて、40歳になって、今の会社を友人とともに立ち上げました。若い時は自分自身が表現者になりたいという思いが強かったのですが、やがて、人の話を聞いてそれを汲み取って何かを作り上げた時の方がやりがいを感じるようになったんです。そこからは人の話を聞いて「通訳」してカタチにして伝えること、つまり「デザイン」をすることへの喜びを感じながら仕事するようになりました。

Q2:現在、どのような活動をされていますか?

企業相手の広告制作など、グラフィックデザイン、ウェブデザインの仕事が基本的には中心ですが、最近はずいぶん『吉祥寺かるた』から派生した仕事も増えてきました。
たとえば、『吉祥寺かるた』のスピンオフ的な商品として、『吉祥寺かるた 行くぜ!イースト』という商品が2022年の春に発売になりました。イーストサイドというのは吉祥寺駅の東側エリアのことなのですが、特に偏愛が強そうな個性的なエリアなので、新しい発見や面白い方との出会いが沢山ありました。やはり、かるたづくりは「偏愛集め」に効くなあと、改めて感じました。

Q3:今後、どのような活動をしていきたいですか?

『吉祥寺かるた』や『吉祥寺かるた 行くぜ!イースト』で起きたような、「デザイン」と「遊び」を通してコミュニティを楽しく育てる取り組みをやっていきたいです。
当面は『吉祥寺かるた』のように、地域のコミュニティをもっと深掘りしていきたいですが、やがては、地域に限らず、広い意味で捉えたファンコミュニティを育てるような取り組みもしていきたいと考えています。たとえば、会社というのもひとつのコミュニティです。でも、普段働いている自分の会社をコミュニティと捉えている人は少ないですし、ましてや会社愛を語る場面なんてほとんどないでしょう。そんなときに、かるたづくりのノウハウが活用できるんじゃないかと考えています。会社の歴史や理念、製品のことや会社のあるあるを社内から集めてかるたを作ったら、きっと盛り上がりますし、意外に自分が会社を愛していることに気づくかもしれませんし、また採用ツールとしてもすごく優秀なものになると思います。かるたという「ゲーム」にしちゃうことで、色んな人を巻き込んで、螺旋状に偏愛のコミュニティを育てていくことができるんじゃないかと思うんです。

Q4:その活動は誰のために行っていますか?活動を続けることでどのようにハッピーになってもらいたいですか?

コミュニティを育てる活動は、やはり偏愛をそれぞれ持っている人たちのために行っているんだと思います。愛は持っているけれど、それを表現する機会がない。共有できる仲間がいない。共感しあって盛り上がれる場がない。そんな行き場を探している偏愛たちに、デザインと遊びの力で行き場を作ってあげられたらハッピーなんじゃないかと思います。僕自身も、いろんな偏愛が表現される瞬間に立ち会えたら楽しいですし。偏愛が偏愛を呼び、互いを巻き込んで竜巻が起きる、そのきっかけのところにいることができたら最高ですね。

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