PERSON 人を知る

手塚一郎さん
INTERVIEW

「やりたいことに挑戦できるきっかけづくり」を横丁で

株式会社ビデオインフォメーションセンター 代表

手塚一郎 Ichiro Tezuka

株式会社ビデオインフォメーションセンターの紹介

1972年設立後、1998年ハモニカ横丁にハモニカキッチンオープン。エリア密着のマーケティングをめざし、ハモニカ横丁の「イマ」「ココ」「ココの人」を中心にお店を展開、現在ハモニカ横丁11店舗を運営中。

interview インタビュー

Q1:他者からどのようなイメージを持たれていると思いますか?

それぞれに思われていることが違うと思います。表面的な活動だけ見ている人からすると、「商売上手」と思われているかもしれませんが、長い付き合いのある人や、自分と近い距離感で関わっている人は「手塚はやりたいことをやっているだけ」「マイペース」と言われているでしょうね。小さい時から、「みんなと同じが嫌い」なので、「変人」と思われているかもしれません。

Q2:「やりたいことをやっている」「変人」、それぞれそう思われていると思う理由はありますか?

社名の「ビデオインフォメーションセンター」の由来でもありますが、最初は映像の制作会社を作りました。そこから吉祥寺駅や三鷹駅の近くでハモニカ横丁を作ったり、輸入雑貨のお店を運営したりと幅広く活動をしています。
幼少期は栃木県の宇都宮で育ち、中学校でも生徒会長をしていて優等生でしたが、家が「すっぽん屋」の商いをしていたせいで、裏では「すっぽん」と呼ばれていたみたいです。そうやって幼い頃から「変人」と思われることに抵抗がなくなっていって、今も自分が思うように行動できるのかもしれません。

Q3:輸入雑貨のお店に飲食店、さまざま種類のお店をやられているのはなぜですか?

好きなことをやってきた結果、という感覚が強いです。大学の時にやると決めて始めたビデオ機材の専門店でしたが、ビデオが広く普及するようになったのを機に、ビデオ店の2階で自分が好きな焼き鳥が食べられる「ハモニカキッチン」を始めました。飲食業と映像業というと、全く違う職業に思われがちですが、食べ物を決めて、内装を決めて、世の中に発信していくという流れは同じで、「演劇」にも似ているところがあるんです。飲食店を始めてから、食べて飲んで、コミュニケーションする面白さに魅せられていきました。

Q4:こんな風に生きていきたいという生き方や、尊敬している人物はいますか?

「自分自身がかっこいいと思える生き方をしたい」と思って生きてきました。大学生のころから哲学書に魅せられて、オルテガという哲学者の「大衆の反逆」という本が大好きでした。時代を見通す力もあって、尊敬しています。もっと早く哲学書を読んでおけば、余計なことを考えなくても済んだなと思います。ビデオインフォメーションセンターのホームページでで、「テヅカイチロー イイタイホウダイ」」という投稿もしていますが、オルテガの著書もイメージの源になっています。

手塚一郎さん

Love

Q1:「愛を伝える」と聞いて、自分にとっての愛とはなんですか?

「存在自体への愛情」が近いかもしれません。
極端な例えですが、もし身内の者が容疑者になったとしても、その事実を受け入れ、それでも尚その人を信じ続ける。生きているだけで愛すべき対象だということです。これは子育てにもいえることで、「生きているだけでいい」といって育てられた子どもと、否定されてきた子どもとでは、その後の生き方も変わってきます。「あなたは生きてるだけで私の宝よ」と「愛情」を注いで育てれば、「挑戦できる人間」になると私は思います。挑戦する分、失敗も多くなるかもしれませんが、トライし続けられる人生になるんじゃないかと思いますね。

Q2:わざわざいう必要がない、自分の「こだわり」はありますか?

普段からこだわりが強いので、それを表に出さないようにしています。それをなるべくさらっと、スマートにやれたらかっこいいなと思うのですが、なかなか難しいですね。振り返ると、最初にビデオをやろうと決め、やり続けたのも大きなこだわりでした。「芸術は終わりました」と言われている時代だったので、芸術やものづくり自体、周りからの批判を浴びる対象でした。それでも絵と音で残すことに意味があると思ってビデオを続けたことは、自分の芯を通し続けたこだわりだったと思います。

Q3:現在「愛」が一番向いている関心ごとはなんですか?

自分だけではできないことを若い人たちとコラボして実現できたら、と考えています。まずは横丁の中から始められたらいいですね。資本主義や近代の病とも言えるかもしれませんが、私自身も「新しいもの」が好きです。1970年から80年代に東京のいろんなところに行って映像を撮ったことや、建築家の隈研吾さんと仕事をやる中でいろんなアーティストや人々との関わりが増えてきました。彼らとの関わりを活かして、新しいものを生み出していきたいと試行錯誤しています。

Q4:「こだわり」や「愛」を見つけるヒントはどんなところにありますか?

現代では、「何がやりたいか分からない人」が多いと思うので、「好きなこと」をやることがすごく大切だと思っています。 何か一つでも興味を持ってフォーカスしていれば、他の可能性も広がります。
最近、下北沢にコーヒーのお店を開いた方がいますが、豆の購入から焙煎、淹れ方まで突き詰めていて、そこのエスプレッソがすごく美味しいんです。その店長、実は敏腕実業家でもあるんですが、コーヒーを通してまたいろんな話ができるんですよね。彼との関わりで、「何か具体的なこだわりがあると、派生して、他の可能性が見えてくる」ということに気づきました。

手塚一郎さん

Action

Q1:いままでどのような活動をされてきましたか?

1972年のビデオインフォメーションセンター設立から始まり、1998年にハモニカ横丁に「ハモニカキッチン」をオープン、他にもハモニカ横丁内で焼き鳥屋の「てっちゃん」やローストチキン専門店「ポヨ」を開き、輸入雑貨のお店なども運営してきました。ハモニカ横丁では「ここでしかできないことができるんじゃないか」と、エリア密着のマーケティングをめざし、今では11店舗になりました。
そんなハモニカ横丁も、戦後は闇市が開かれ、足の踏み場もない無法地帯だった時代もありました。それからロンロンやデパートができ、横丁に賑わいがなくなって、今の横丁の形ができるのも見てきましたが、そうした変遷も見ていると、面白いものです。他にも、旅行で訪れた奄美大島が気に入って、いろんな人に取材して、本を発行したこともあります。基本的に、好奇心旺盛なんだと思います。

Q2:現在、どのような活動をされていますか?

それぞれのお店を運営しながら、2020年9月に「スモールノジッケン」というシェアワーキングスペース始めました。吉祥寺は家賃が高いと言われていますが、もっといろんな人が自由に楽しめるスペースを作って、クリエイティブな活動を発信する応援がしたいと思ったのがきっかけです。今ではウエディング会社やクリエイターのアトリエとして、また飲食店のキッチンなど、幅広く利用してくれていて、イベントスペースとしても活用しています。最近は、デドロイト(※)の面白さにも気づいて、若い人を集めて対談イベントもやりました。

※デドロイト:アメリカ合衆国ミシガン州南東部にある都市で、主要産業が自動車産業であることから「自動車の街」とも呼ばれる。ゴーストタウン化してしまった廃墟が多いエリアで、逆にアートの街としても注目されることがある。

Q3:今後、どのようなことをしていきたいですか?

これからも若い人たちとコラボしたり、ハモニカ横丁で新たな可能性を発信していきたいです。吉祥寺は住みたい街として注目されることもありますが、吉祥寺はまだ「何もない街」でもあると思っているんです。だからこそ、なんでも生み出せる可能性があるので、その可能性も探求していきたいですね。
自分にないものを持っている人たちと何かをしていきたいですし、活動に協力してもらえる仲間を見つけていきたいとも思っています。商売人気質でもあるので、「しっかり実現できるのか」も大事にしていますね。現場を知っているからこそ、ちゃんとした形で実行できることがあると思っています。

Q4:活動を続けることでどのような想いを届けていきたいですか?

人の心に届けたり、何か引っかかる、アンテナに触れるようなものを作っていきたいと思っています。イベントや新しいものを見たり体験した人を、「あれ!?なんなんだろう」と驚かせたいです。
例えば居酒屋「てっちゃん」の内装は、かなり拘ってインパクトのあるものにしたつもりでしたが、予想していたよりは反応が薄く感じました。「もっとインパクトのあるものにしないと、人の心には響かないのだ」と感じた経験です。そうやってまず実際にトライしていくこと、そしてやっぱり「やりたいことをやったほうがいい」ですよね。そのマインドを広げたいですし、周りや地域のために、「やりたいことに挑戦できるきっかけ作り」もしていきたいです。

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