PERSON 人を知る

松村早紀さん
INTERVIEW

保護猫と当たり前に共存できる、ハッピーな社会を次世代へ

株式会社きゃりこ 動物取扱責任者

松村早紀 Matsumura Saki

interview インタビュー

Q1: 周りの方からどのようなイメージを持たれていると思いますか?

仕事では「ストイックだね」、プライベートでは「フランクだね」と言われることが多いです。命を預かる仕事なので、オンオフの切り替えは自分の中でしっかり意識するようにしています。以前会計事務所でOLをしていた頃は、気を張ることもなく、何かあれば周りに甘えていたので、別人のように思われるかもしれませんね。

Q2:そのイメージは、ご自身の理想とは近いですか?

自分でも「いつもクールな松村さん」と思っている部分があるので、近いのかもしれません。最近ようやく、いい感じに歳を重ねてこれたようにも感じます。働き始めた当初は、里親さんや周りの保護猫のオーナーさんたちが年上の方ばかりで、早く歳をとりたいと思っていました。
保護猫を里親さんに引き渡すときには、命を扱っているので、守ってもらわないといけない決まりごとや手続きが沢山あります。それらをしっかり聞き入れてもらうためには「信用・信頼できそう」「ちゃんとしてそう」という印象を持ってもらう必要があります。「年下だから信用できない」と思われないためにも、仕事モードに気持ちを切り替えたり、猫の知識を人一倍身に着けようと意識してきました。お店に年下のスタッフが入ってくるようになり、任されることも増えて、より一層しっかりしなきゃという気持ちが強まりましたね。

Q3:ご自身としては、周囲にどのようなイメージを与えたいですか?

目指していた自分になっていると思うので、このまま流れに身を任せようとも思いますし、あとはもっと「頼ってもらえる人」になれたら嬉しいですね。
特に、すでに猫を引き渡した里親さんにとっては、頼れる存在でありたいです。保護猫カフェは、引き渡したら終わりではなく、何かあればすぐに相談できる場所です。病気や育て方だけでなく、どうしても少しの間お家を空けないといけない場合もありますが、困ったときに相談できる場所がわからない方も多くいらっしゃいます。「里帰り」としてお預かりすることもできるので、ぜひ私たちを頼って欲しいと思っています。

松村早紀さん

Love

Q1:「愛を伝える」と聞いて、自分にとっての愛とはなんですか?

なんといっても「猫」ですね。自宅にも猫が2匹いるので、猫がいるのが当たり前で、いない生活は考えられません。付き合いが長くなってくると、不思議と意思疎通までできるようになるようで、私が落ち込んでいるときはそばにいて癒してくれます。裏表なく自由気まま、何をしても許されてしまうような可愛さこそ猫の魅力だと思っているので、お店でも自宅でも基本的には叱らず個性を豊かにのびのびと過ごさせています。「猫」というよりは、自分の子どものように接しているので、働いている時も保母さんをやっている感覚に近い気がします。

Q2:わざわざ人には言わない自分の「こだわり」はありますか?

猫を飼いたいという方に、メリットだけでなくデメリットまでしっかり話すようにしています。「かわいいから飼いたい」と先のことをあまり考えずに買ってしまい、後で困ってしまう話を聞いたことはありませんか。
思ったより費用がかかるということ、旅行も今まで通りには行けないこと、仕事を終えて疲れて帰った時でも欠かさずお世話をしなくてはいけないこと、猫の種類によってかかりやすい病気のことなど、詳しくお伝えします。こちらから「里親を募集しています」と伝えるというよりは、里親になる覚悟が決まっている方に飼って欲しいです。中には、猫のために引っ越しされる方もいらっしゃいます。そうやって覚悟を持ってお迎えくださる方を、全力でサポートして、応援したいです。

Q3:猫や保護猫に関心をもったきっかけはなんですか?

実家で元々と猫を飼っていて、小さい頃から動物が近くにいました。その猫に、遺伝性のガンが見つかってしまい、3歳ちょっと前に亡くなってしまいました。若かったため進行が早く、気づいた頃には末期症状でした。亡くなる前1ヶ月間は毎日病院に通って闘病していましたが、どうにもならないことがあるんだなと衝撃を受けました。その体験からもっとしっかり勉強しようと思うようになり、今では皮下点滴など、自分でできることも増えてきました。
それまで保護猫のいない猫カフェで働いていたので、保護猫と初めて対面したときは「こんなに可愛いんだ…!」と、衝撃を受けました。そこから、かわいさにどんどんのめり込んでいましたね。ちなみに、保護猫カフェは、「飼い主が見つかるまで所有者がはっきりしていない」のも通常の猫カフェとの大きな違いです。猫カフェはブリーダーさん経由でお店が飼い主になるのに対し、保護猫カフェきゃりこは、まずNPO法人の方が捨て猫や野良猫を保護し、お店でお預かりして最終的に飼い主を見つけていきます。

Q4:保護猫を里親さんにお渡しして良かったと思うエピソードはありますか?

良かったことは数え切れませんが、最近だと、コロナの影響で大学に一度も登校できていないお子さんを持つ保護者さんから嬉しい報告がありました。「保護猫が自宅にやってきたおかげで、子どもが以前より楽しそうに見えます。率先して一番に世話をしているんです」とお話してくださったんです。病気を持っている飼い主さんが引き取ってくださって、「生きなきゃ!」とパワーの源にもなっているというお話も伺います。猫を引き取る際、ご自身の病気の再発を心配される方もいらっしゃいますが、もし再発して飼うのが難しくなっても、きゃりこのお店で面倒をみるつもりです。
里親の皆さんが定期的に写真を送ってくれたり、年賀状でも成長を報告してくださって、猫たちの元気な姿を見るたびに、「この仕事をしていてよかった」と、幸せな気持ちをもらいます。

松村早紀さん

Action

Q1: いままでどのような活動をされてきましたか?

2年ほど前、両国の啓蒙活動イベント「江戸ねこ茶屋」に参加し、お店に在籍していた猫、新たに保護団体からきてもらった猫の合わせて50匹を連れていきました。もともと保護猫登場の予定はなかったようですが、お話ししていく中で保護猫への想いに賛同して実現したのも嬉しかったですね。一日の来場者数が500人以上の大反響で、7ヶ月間を通してたくさんの方に保護猫の存在を知ってもらえて、里親さんを探すこともできました。
ちなみに、現在のきゃりこのお店の内装は「和テイスト」ですが、きっかけになったのもこのイベントです。イベントのテーマが浮世絵で、「和×猫」の可愛さに目覚めました。

Q2:現在どのような活動をされていますか?

保護猫カフェ2店舗と、通常の猫カフェ1店舗の計3店舗を運営をしています。
埼玉県の保護猫カフェの開店直後に一度目の緊急事態宣言が発令されてしまったり、11年半運営してきた新宿の猫カフェが閉店してしまい大きな影響を受けましたが、クラウドファンディングで支援をいただき、移転準備を進めています。
コロナ禍でお店の運営以外に物販や通販も始めましたが、会計の仕事の知識が役立つ場面も出て来ました。当時の苦労が、今猫のためになっていると思うと、頑張っておいてよかったなと思います。

Q3:今後どのようなことをしていきたいと思っていますか?

「保護猫って可愛いんだよ」と、もっともっと伝えていきたいです。
私も保護猫は出会うまでは、「人馴れしてなさそう」「病気がありそう」「汚そう」「野良猫なのかな」と思っていました。でも、実際の保護猫は、シャンプーされたきれいな毛並みで、病院の検査も定期的に受けているので安心です。私に限らず、世間的に見てもそういうイメージを持たれている方も少なくありません。このギャップを埋めるきっかけになるようなイベントを開催できたらと思います。
また、せっかく保護猫の譲渡会に来ていただいても、譲渡条件の厳しさが大きな弊害となっています。もっと保護猫カフェの存在を広めて、譲渡会以外でも保護猫と会う機会を増やしていきたいです。
そして、猫カフェに「もっと気軽に」来てもらいたいですね。猫カフェが初めて方にとっては、猫カフェに入ること自体、少し勇気がいるかもしれません。オンライン猫カフェもできるかもしれませんし、もっとお店に個性を出したらどうかなど、わくわくしながらアイディアを考えています。

Q4:その活動をおこなうことで誰にどのようにハッピーになってもらいたいですか?また、伝えたいメッセージはありますか?

一番は猫のため、そして猫の周りの方々にもハッピーになってもらいたいです。特に子どもたちや若い世代に保護猫をメジャーに感じてもらうことで、だんだんと次の世代にと繋がっていくと思います。
以前、お店によく遊びに来てくれていた小学5年生の女の子がいました。保護猫を飼いたくてもご両親に反対されてししまっていたのですが、保護猫を迎えるデメリット、そしてデメリットに対する覚悟や保護猫の社会的意義までプレゼンし、無事に保護猫をお迎えしてくれたことがありました。
こんなふうに、保護猫に対する価値観を正しく認識してもらうことが大事だと思っています。そして、猫を飼っていることが当たり前で、共存できるような社会になってほしいと願っています。

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