PERSON 人を知る

前田大志さん
INTERVIEW

築60年の空き家から、地域の「繋がり」と「居場所」をつくる

えんがわ家 一般社団法人ENGAWA理事

前田大志 Taishi Maeda

えんがわ家の紹介

「みんなでツクル みんながツドウ みんなをツナグ」をコンセプトに、シェアハウス、シェアスペース、シェアファームを運営している築60年の一軒家。2019年10月にオープンし、地域に開かれた場所として赤ちゃんからお年寄りまで、世代問わず誰もが気軽に立ち寄ることができる。

interview インタビュー

Q1:他者からどのようなイメージを持たれていると思いますか?

「行動力がある」と言われることが多い一方、「抜けているところもあるよね」とも言われますね。高校の教員をしながら並行して地域で活動をしているので、パワフルと言われることもありますし、興味があることはめちゃくちゃ頑張れるタイプだと思います。やりたいことがあっても、実際に行動をゼロからスタートするって実は勇気が要りますよね。まず僕が、「できることからやってみよう」というところで力になれたら嬉しいなと思っています。
いつも何かしら抜けていることが多いので、その分様々な人の力を借りています。僕がやり始めて、「それやりたかった!」と賛同してくれる方々が、抜け落ちたところが助けてくださっている気がします。

Q2:そのイメージは自分が望むイメージと近いですか?自分が望む他者に与えたいイメージとはどのようなイメージでしょうか?

実は自分が前に出るよりは、「黒子役」をしたいタイプなんです。昔から、文化祭とかお祭りみたいなものが好きで、気づいたら「団長」のように仕切るポジションにいたこともあります。でも実際は、リーダーを支えるような立ち位置でありたいと思っています。「えんがわ家」は自分も発起人の1人ですが、これからも仲間を増やしつつ、みなさんがやりたいことを支えていけたらすごく嬉しいです。

前田大志さん

Love

Q1:「愛を伝える」と聞いて、自分にとっての愛とはなんですか?

夢中になれて、頭から離れないもの、考えて幸せになれることが「愛する」だと思っています。その1つが、えんがわ家です。えんがわ家は1年前から、三鷹市役所の職員の方と一緒に運営をしています。こちらの家は、元々オーナーさんのご両親が住んでいてたんですが、亡くなった後、空き家になってしまいました。ご両親のケアマネージャーさんが、「この家を活用できないか」といろんな人に声をかけてくださったのをきっかけに「アキヤカフェ」が始まり、カフェに参加して企画をしていくうち、1年半後にえんがわ家が生まれました。シェアハウスとして愉快な仲間と暮らしながら、シェアできる空間を設けて地域の方が気軽に遊びに来られる居場所として運営しています。

Q2:「えんがわ家」の誕生には、どんな想いがあったんでしょうか?

空き家の問題を、リノベーションといった形で生かしていけないかと考え始めたのが始まりでした。もともと僕自身は、地域の子どもやそこに住む人たちが集まる「多世代共生」を考えていて、中身となるソフトのイメージはありました。高校の教員として働く中で、いわゆる「荒れている学校」で子どもの家庭環境がうまくいっていない実情を見てきたことが大きなきっかけです。家に帰っても誰もいない子ども、離婚して一人で誰にも相談できない親御さん...。「繋がり」があったら解決できるのではないか、自分の地域で何かできないかと、1年くらい動きながら妄想し、今のコミュニティに行き着きました。日中はご一緒している地域の事業者さんに「おやこひろば」として使っていただいていますが、それは私にとっても本当に嬉しいことです。

Q3:わざわざいう必要がない、自分の「こだわり」はありますか?

「人の良いところと繋がろう」という意識があります。課題集中校(※)に勤めていた時、子どもに対して「あれもできないこれもできない」と、できないことにばかり目が向いてしまっていました。そんな時、「8割悪いところかもしれないけれど、2割は良いところが絶対にある」という上司の言葉が心に響きました。「あれもできるこれもできる」と、できるところを探していったら見え方が変わって、子どもたちとの接し方も変わりました。
これは子どもや教育に対してのみならず、人生のところのヒントになっています。「空き家」も一見すると、古くて使いがたいというイメージがあるかもしれませんが、既に「建物」という「箱」があって、「場所」がある。そう思ったら、プラスに捉えられますよね。

(※)学力層が低く問題行動等が原因で教育活動が困難な状態にある学校のことで、高等学校のことを指すことが多い。

Q4:現在「愛」が一番向いている関心ごとはなんですか?

「ゆるく、自分らしい生き方」に興味があります。近年の「ブラック労働」は、残念ながら私にとっても身近な話題で、自分の健康や生活を犠牲にしてまでやる仕事ってどうなんだろうと考えることもあります。例えば、形を探りつつこの仕事を続けながら、物件を借り切って、もう少したくさんの方が入居できる環境でえんがわ家のようなことをやってみたいという気持ちもあります。ゆるくみんなで一緒にご飯を食べたり、畑もいじったり、その延長に子育てや介護があったり…そんな暮らしに憧れています。

Q5:「繋がり」を作る中で意識していることはありますか?

「 ひとりになるのは簡単で、人と繋がるのは難しい」という、シェアメイトさんの言葉が心に残っています。繋がりがあったとしても、自分が一方的にシャットダウンしたら、そこで終わってしまうんですよね。
ただ、無理に繋がろうとしても苦しいですし、1人になりたい時もあります。最も大切なことは「自分のペースや距離感で繋がれる」ことだと思っています。
意外と無理なく繋がる方が長く続いたり、ここぞというときに力を発揮したり…。それを「有機的な繋がり」と表現しているのですが、そんなコミュニティができたら良いなと仕組みや企画づくりを楽しんでいます。

前田大志さん

Action

Q1:行動の原点には、どんなエピソードがありますか?

小学生の時、「塾」がすごく楽しかったんです。その頃、周りの友人はスポーツ少年団に入り始めて、サッカーが大人気でした。自分も興味がなかったわけではないですが、なかなか「これだ!」と言うものが見つかりませんでした。そんな時、塾に行って、授業を受けて勉強するのがすごく楽しかった。子どもが「塾が好き」なんて珍しいことかもしれませんが、それをきっかけに自分から中学受験をしたいと思うようになりました。塾で面白い仲間に会えるのが刺激的だったのだと思います。教員をしている原点も、「勉強することは楽しい」ということを子どもたちに伝えたいという思いがあります。まだまだ課題ばかりの毎日ですが、いつも授業づくりがとても楽しいです。

Q2:現在、どのような活動をされていますか?

えんがわ家は築60年の一軒家で、シェアハウス、シェアスペース、シェアファームを運営しています。誰でもいつでも立ち寄れる場所として地域に開かれています。普段は地域の事業者さんにお貸しし、赤ちゃん連れの親御さんたちが気軽に立ち寄れるおやこひろばとして使っていただいています。庭のスペースを畑にして地域の方と一緒に野菜を育てる「シェアファーム」を始めました。これは、コロナ禍で苗の売り先に困っている農家さんの声も知り、自分たちも何かできないかと始めたものです。オープン時にえんがわ家を開放的な空間にしようとブロック塀を撤去したのですが、畑を始めたことで家の前を通る方との何気ない交流が生まれ、その相乗効果を感じています。また、最近は地域のNPOさんにいわゆる「寺子屋」をはじめていただきました。地域で子どもを見守る環境ができつつあります。
もともと、そんな「居場所をつくりたい」というのが始めたきっかけでもあったので、願い続ければ叶うことを20代後半で確信した出来事でもありました。

Q3:今後、どのようなことをしていきたいですか?

住みながら運営しているからこそ出来ることも多いのですが、私自身も次のライフステージを考えています。運営として末長く携わりつつも、少しずつシェアメイトのみなさんや地域の仲間にバトンを渡しつつ、持続可能な居場所としてあり続ける形を模索しています。また、この仕組みを次に自分が住まうところでも実践したいです。みんなでご飯を食べたり、畑を耕したり、子どもを育てたり…。シェアすることはとても楽しいですし、辛いときの支えになります。時代はそうなりつつありますが、やはり「無理なく」繋がることを大切にしながら、この取り組みを自分のライフスタイルへと昇華させていきたいです。
また、授業をすることが大好きなので、教師業を追求していきたいです。ただ、大きい組織で働くということは、それなりに苦しいこともありますし、理不尽なことを要求されることも少なくないです。少しずつ、様々な選択できるように、今の仕事を含め、自分の力量を高めて行かなきゃなと思っています。

Q4:その活動は誰のためにおこなっていますか?活動を通してメッセージを伝えたい相手はいますか?

えんがわ家に関しては極端に言えば、全ての方になるかと思います。特に子育て世代のママさんや、学校で行き詰っている子どもたちには目を向けていきたいです。みんな1人じゃないよってメッセージを地域の居場所というハードやソフトで伝えたいですね。子どもについて言えば、学校では制限されることも多いですが、えんがわ家のような地域の居場所でやりたいこと、話したいことを思いっきりできるように1人の大人として支援したいです。

Q5:活動を続けることでメッセージを伝えたい相手にどのようにハッピーになってもらいたいですか?

地域の方々に「えんがわ家があってよかった」と思っていただけたら嬉しいです。真向かいに住んでいるのは高齢のご夫妻ですが、おやこひろばに赤ちゃんが来たことで、「久々に子どもの声を聞いた」と喜んでいただけました。小さなことかもしれませんが、地域にとっての大きな変化の1つだと思います。物やお金ではなく、「繋がり」で自分の暮らしも豊かになる、そんな実感とハッピーをつくっていきたいです。

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