PERSON 人を知る

小松由美さん
INTERVIEW

まちづくりで、愛する吉祥寺をみんなの「ふるさと」へ

NPO法人サラダボウル 代表理事

小松由美 Komatsu Yumi

NPO法人サラダボウルの紹介

武蔵野のまちで、生き生きと活動できる環境づくりを目指しているNPO法人。ニューヨークで並立共存を表す「salad bowl」が由来で、多様な人種・民族・文化を尊重し、共存を図る多文化主義の意味がこめられている。
コロナ禍に行った「ハートマスクプロジェクト」が2020ユーキャン新語・流行語トップ10を受賞、「フードバンクむさしの」を立ち上げるなど、武蔵野地域のまちづくりに力を入れている。

interview インタビュー

Q1:他者からどのようなイメージを持たれていると思いますか?

「ボランティアの人」「ボランティアが好きな人」と思われているかもしれません。活動の種類が多いので、周りからするとなにをやってるかわからない人、不思議な人と思われているかもしれませんね。あと、「池の人」と呼ばれることもありました(笑)。

Q2:「池の人」というのはどういう理由でしょうか

井の頭公園の池の「かいぼり(※)」の活動のイメージだと思います。「かいぼり」は、生態系を守るために日本でも古くから行われてきた方法で、一度池の水を全て抜いて天日干しをすることで、水質を改善することができます。
井の頭公園の「開園100周年」に合わせて2017年に28年ぶりに実現し、その後も3年間で3回行われてきました。23区との境目であり多摩の入り口でもある武蔵野市は、地形的にも東京都のちょうど中間で、東京湾まで自然を繋ぐ役割もあります。そんな大切な場所だからこそ、奥多摩の山々から、生態系をどうやって海まで繋いでいくのかは課題の一つです。周辺の生態系とまちは切り離せないものなので、普段の生活からそういうことを考えて暮らしていくのが理想ですね。
「かいぼり」も、世間的には「池の水を抜いて、外来魚の駆除をした」と表面的にとらえられてしまうことも多いので、Facebookでは「かいぼり」の意味など、目には見えない部分も意識して発信してきました。

※かいぼり:池や沼の水をくみ出して泥をさらい、天日に干すこと。外来種駆除も行うことで水質をリセットし、生態系を保つことができると言われている。

Q3:「ボランティアの人」や「池の人」というイメージについて、どう思いますか?

普段はただの主婦ですが、自分の一部です。ボランティアも、「やってあげてる」「お手伝いをしている」という意識は一切なくて、自分としては「学びの場」「地域から教えてもらっている」という感覚に近いです。たまたまハーモニカ横丁で生まれ育ったので、子どものころからだんだんと吉祥寺への想いが強くなって、地域活動に参加するようになりました。
私のしていることは全然特別なことではなくて、興味を持ってやろうと思えば誰でも参加することができることばかりです。ぜひ、みなさんも興味を持って参加して欲しいです。

Q4:自分が望む他者に与えたいイメージはどのようなイメージでしょうか?

子どもの頃、「ゆみちゃん」と呼ばれていたので、吉祥寺では下の名前で呼ばれるのが好きです。
将来的には「吉祥寺のゆみばあちゃん」になりたいですね。嫌なものは嫌、良いものは褒めたいという正直で素直な生き方を続けていきたいですね。私のことをよく知る人からは、「Let it beだね」と言われます。自分のまま、ありのままで生きて行きたいと思っています。

小松由美さん

Love

Q1:「愛を伝える」と聞いて、自分にとっての愛は何ですか?

私の愛は「吉祥寺」そのものです。他の街に行っても、バスの行先表示で「吉祥寺」の文字を見るだけでときめきます。私が子どもだった頃、ちょうど今の吉祥寺の基礎ができる開発の時期で、私の父も頻繁に会合に出かけていました。道端で周りの大人たちがみんな開発の話をしているのを間近に見てきたので、「吉祥寺=みんなの想いが集まってできたまち」というのが染み付いています。
その時代を知っている人は、そんな特別な愛着を持っている人が多いかもしれません。

Q2:わざわざ人には言わない自分の「こだわり」はありますか?

いつも心の根底にあるのは「恩返し」です。私を育ててくれたまちや地域の方々の大事にしてきたものを自分も大事にしていきたいという想いがあります。
24年前、長女を出産したときに、子育てをするお母さんたちが悩みを共有できる場所を作りたくて、「むさしのキッズ」というベビーサークルを当時のママ友と作りました。西コミュニティーセンターのホールをお借りして親子体操などを開催していた時、コミセンの方はいつも温かく協力をしてくださいました。何もお返しができず申し訳なく思っていたのですが、「私達みたいな年代になったとき、それを次の世代にバトンタッチしてくれたらいいからね。恩返しはできるときにやったらいい、順番だから」と言われ、とても心が楽になりました。
その経験があって、子育てが一段落してからコミセンの協力員を始め、そこから地域活動が広っていきました。それがご恩返しの始まりです。

Q3:現在「愛」が一番向いている関心ごとはなんですか?

「まちづくり」です。子どもからお年寄りまで生活をしているまちを良いものにしていくには、いろいろな目線で考えられるようにならないといけません。いろんな立場から見ることで、考えをブラッシュアップすることもできます。私自身が一つの活動にこだわらないのも、いろんな視点を持っていたいと思ったからですし、一見まとまりのないたくさんの活動も「まちづくりのため」という軸があります。最近では意見を聞かせて欲しいと相談を受けたり、武蔵野市から市民委員のオファーをいただくようにもなりました。10年近く活動を続けてきた今、いいまちを作ることにいっそう関心が向いています。

Q4:まちづくりに関心を持ったきっかけはなんですか?

子育てが少し楽になって周りを見回した時、まちのあまりの変わりように驚きました。駅前で育ちましたが、思春期には吉祥寺以外の所で遊んでいました。結婚して、子どもが産まれ、子育てに追われて…周りを振り返る余裕もなく暮らしていましたが、久しぶりにゆっくり吉祥寺のまちを見回した時、「あれ?私の知っている吉祥寺じゃない」と違和感を感じました。チェーン店や派手な看板が増え、昔の雰囲気がなくなってしまったことに切なくなってしまったんです。「自分のまちに自分で意見を言えるようになりたい」と切に想い、何をどうしたら良いのか知るために地域の活動に自分から顔をだすようになりました。

小松由美さん

Action

Q1:これまで、吉祥寺への愛を伝えるためにどのような活動をされてきましたか?

地域活動の原点として、まずはまちの状況や歴史を自分なりに知るところから始めていきました。吉祥寺には江戸時代から続く歴史があります。まちの歴史を知るにつれ、その遺伝子を守っていきたいという思いが強まりました。こうしたインプットをきっかけに、興味の幅が広がり、市民活動に参加するきっかけにもなりました。「個人」より「団体」として活動する意義も感じ、ペット関係の活動をしている姉と共に「特定非営利活動法人サラダボウル」を立ち上げ、今はその活動を中心にしています。

Q2:「NPO法人サラダボウル」ではどのような活動をされてきましたか?

市民活動をアウトプットする場所として、まちの人や動きを繋げ、まちづくりに活かしていくための活動をしています。コロナの影響でイベントの開催はできないけれど、それでも今できることがないかを考え始めたのが、「エチケットマスクプロジェクト」です。姉と二人で200枚作成し、ハーモニカ横丁で材料費のみの原価で販売をし、不足していたマスクを届けたいと始めました。その活動の中で、多くの家庭でサイズが合わない、余分に手に入ったなどの理由で不要なマスクが眠っている可能性に気が付きました。
そこで新たに立ち上げたのが、「ハートマスクプロジェクト」です。不要な新品マスクを集め、より多くのマスクが必要な方や医療機関へ届くよう配布しました。商店街やまちの皆さんのご協力で吉祥寺や三鷹市内に回収ボックスを設置させていただき、密にならずに多くのマスクを回収することができました。こちらの活動への反響は大きく、なんと「2020ユーキャン新語・流行語トップ10」を受賞させていただきました。とにかく驚きましたが、皆さんの温かいお気持ちが集まったおかげでいただくことができ、本当に感謝しております。

Q3:現在、どのような活動をしていますか?

「フードバンクむさしの」の活動が、動きはじめています。フードバンクやフードパントリー(※)は全国的にありますが、他の地域と同じではなく、「地域にあった武蔵野スタイルのフードバンク」を作るべきだと考え、まず地域の調査や勉強に力を入れました。
この活動を「フードリンク」と名付け、子ども食堂の方や経験のある方のお話を聞いたり、地域の問題や状況をしっかり把握して、どういったものを立ち上げられるかを丁寧に向き合って来ました。他の地域でよかったことをそのままやるのではなく、「武蔵野市に合った」「武蔵野市だからこそ必要なもの」を目指していくようみなさんと活動しています。

※フードバンク・フードパントリー:食料銀行を意味し、まだ食べれるのに処分されてしまう食料を必要としている人に届ける社会福祉活動、環境面からフードロス削減を目的とした活動と両方の意義がある。

Q4:具体的に、武蔵野市にはどんな問題がありますか?

コロナ禍の給食の余剰食材の問題もありましたが、大型店舗や商店で出るフードロス問題、そしてゴミの焼却問題を抱えています。ゴミを焼却した灰は西多摩郡日の出町に運ばれますが、受け入れ場所のスペースも限られているため、実はもう10年持たないと言われています。
また、大型店舗で廃棄されたお弁当やパンその他の食材が、事業用ごみとして武蔵野市の焼却炉で処分されていますが、この食料を必要としている人に回すことができたら、フードロス問題はもちろん、ゴミの処分問題も一緒に解決できます。そんな風に、武蔵野ならではの問題に目を向けて、連動して解決できないかを考えています。

Q5:すべての活動は誰のために行っていますか?また今後やりたいことを教えてください。

自分のためでもあり、次世代の子どもたちのためでもあります。1人でも多くの人に伝えたいと思いますが、特に子どもに、自分たちのまちを愛せるようになってほしいです。例えば諸事情で、一度まちを出たとしても、また戻ってきたくなる…そんな愛着のあるまちになって欲しいですね。
そして、まちを元気にする活動がしたいと思っています。みんなが楽しい気持ちで「吉祥寺に来たい!」と思えるようなことを始めて、武蔵野市、吉祥寺をもっとみんなに愛される住みやすいまちにしていきたいです。

Q6:吉祥寺で、どのようにハッピーになってもらいたいですか?どのようなまちにしたいですか?

吉祥寺を「ふるさと」だと感じてほしいです。今の吉祥寺も賑やかなまちではありますが、まだまだ楽しんでもらえること、魅力がたくさんあると思います。
生まれ育った人でなくても、遊びに来た人も、心から「楽しかったね!また行こう!」と思ってもらえて、「吉祥寺においでよ!」と住んでいる人がみんなに言えるような場所にしたいです。吉祥寺で育った人たちが、大人になって吉祥寺に戻ってきて会社を立ち上げたり、そういった連鎖が起こっていったら素敵ですよね。吉祥寺に来て楽しい思い出を作ってもらい、ずっと住み続けられるまちになって欲しいと願っています。

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