PERSON 人を知る

小泉直樹 さん
INTERVIEW

個人店の「歪み」は街の魅力。自分らしさがお客さんの思い出に

Ryumon coffee stand 店長

小泉直樹 Naoki Koizumi

Ryumon coffee standの紹介

2011年8月開業、にぎやかなイメージの吉祥寺のなかでは南町という閑静なエリアにある一軒家カフェ。店内では美味しいコーヒーやケーキが楽しめるほか、小泉さん自らがセレクトした店内のアートも見所。お店のオリジナルグッズも作成している。

interview 代表者インタビュー

Q1:他者からどのようなイメージを持たれていると思いますか?

変わっている、アーティスティック、マイペースと思われていますね。物事を見てどう思うか、他の人と考え方や捉え方が違ったり、リアクションがどうやらずれているようです。なぜ他者からそんなイメージを持たれてしまうのか、以前は理由が分かりませんでしたが...今は自覚があります。

Q2:そのイメージは自分が望むイメージと近いですか?

現在はとても近くなりました。ただ独立当初は、仕事がバリバリできて「お店をちゃんとやっている人」が理想のイメージでしたから、理想とのギャップがありました。「アーティスティックな感性をお持ちですね」と言われると、暗に「商売向いてませんね」と言われているようで、嫌だったんです。今でこそ毎日忙しく営業させてもらっていますが、開業2、3年くらいまではお店が暇で暇で...そんな状況だったので、そう言われた時にはなおさら落ち込んでました。それが一周まわって、今はアーティスティックな感性やセンスを駆使して店を営業することが、私たちにしかできない強みであり、価値提供になっていると思います。

Q3:自分が望む他者に与えたいイメージとはどのようなイメージでしょうか?

「元気やワクワクをもらえる人なイメージ」を与えられたら嬉しいです。
例えば、来店のきっかけはSNS映えする写真目的でもいいと思っています。なんとなく来ただけだったけれど、店員の働く様子を見たり、店員たちとしゃべっているうちに「めっちゃ元気出た!」と思ってもらいたいですね。
お店を始めて数年は「飲食店はこうあるべき」という固定観念に私自身がとらわれ過ぎていました。今思えば「丁寧だけど固さのあるサービス」だったと思います。せっかく独立したのに自分自身で縛ってしまっていたんですね。そんな中、うまくいっている周りのお店を見ていて楽しそうに「自分らしさ」を出すことが店の価値になっていることに気付かされました。

小泉直樹 さん

Love

Q1:「愛を伝える」と聞いて、自分にとっての愛とはなんですか?

趣味や感性を同じくしてくれる人たちへの「親愛の情」です。私たちの店のあり方に共感してくれる人たちに満たされた気持ちになってほしいと、心から思っています。
「カフェを愛でる」というのは「アナログなものを愛でる」に似ていると思います。例えばフィルムカメラ、アナログレコード、手巻きのビンテージ腕時計などは、今やスマホ一台あれば事足りてしまうものです。でも、フィルムには枚数制限や現像を待つ時間があることで感じる緊張やワクワクが、レコード屋さんに今日はあの曲は入荷してるかなぁなんて考えながら足を運ぶドキドキがあります。毎朝、自分で巻き上げないと止まってしまう時計に感じる愛おしさは、スマホでは味わえません。これを不便、無駄だと思う人もいれば、愛おしく思う人もいます。私たちは後者の方の気持ちに寄り添った商品や体験を提供したいです。

Q2:わざわざいう必要がない、自分の「こだわり」はありますか?

真面目さ、真剣さと飲食店としての常識のバランスを当然持った上で、個人店ならではの「歪み」も大切にしています。当たり障りのない営業をすれば口コミサイトで嫌われないかもしれませんが、強烈なファンもつきません。店主のクセや愛が感じられる店舗の方が刺さる人には刺さって愛されるのではないかと考えています。私はゆるめなアートが好きなので店内にはイラストがあって、中には「お尻」が描いてあるイラストもあります。飲食店に飾るにはギリギリな選択ですが、この絵をかわいいと思える人は、店のことを強烈に好きになってくれると思っています。

Q3:現在「愛」が一番向いている関心ごとはなんですか?

この街にどんなお店が必要か?ということに関心があります。世の中がチェーン店ばかりになってくると便利な反面、人々がワクワクする気持ちも徐々に削がれてしまう気がするんです。ワクワクしなくてつまらなければ、感度の高い人は他の街に遊びに行ってしまいます。私は私の得意な土俵で商品を提供して、吉祥寺での楽しい思い出を皆さんの心の中に積み上げていけたら幸せです。

Q4:そのことに関心を持ったきっかけはなんですか?

他の街、感度の高い街を見て刺激を受けたことですね。最近だと、渋谷にできた宮下パークという商業施設にとても刺激を受けました。高級ブランドの店舗をはじめ、ストリート寄りなアートギャラリー、インスタで話題なエッジィな店舗、さらにはスケボーパークやレコード屋さんも同じ館に入っていて。それを見た時に、「ここまで」と思っていた枠が広がって「ここまでやっていいんだ」と勇気づけられました。吉祥寺は人気の街と言われているけど、こういう場も必要だな、まだまだ伸び代があるなと気づかされました。
駅前には、誰でも買い物を楽しめる商業施設も便利で必要です。でも、ちょっと駅から離れたところに個性的で濃い体験のできるお店もあれば、街としての振れ幅も出て、より魅力的になると思います。自分も吉祥寺の価値をあげられるお店を作って行きたいです。

小泉直樹 さん

Action

Q1:いままでどのような活動をされてきましたか?

約10年やってきたお店にも変革期があって、今は「3.5期」くらいのイメージです。
開業してすぐの頃の第1期は「新しいコーヒーの価値観」を提供しようとして頑張ってましたが、それではお客様が全然来なくて。2時間ぶりにお客様が来たと思ったら「○○カフェ(近くの人気カフェ)ってどこですか?」と聞かれてしまったエピソードがあるくらいです。コーヒーに詳しかったらお客様は来ると考えていたのですがそんなに甘くなかったですね。
第2期は、お客様に「この店、吉祥寺なのに静かでいいわね」と言われたことがきっかけでお店のあり方を考え始めるようになった頃でしょうか。コーヒーのこだわりを語るより「静かで落ち着いた時間を過ごす場所を提供する」ことが価値になるのかも...と考えて行動を変えました。この頃からようやく店が軌道に乗り始めました。
第3期は、いわゆる「SNS」期。SNS映えする写真が目的の女子大生・女子高生が急に増えて毎日行列になったことから始まりでした。私の店のお客様は、今は女子大生、女子高生がほとんどです。それまで若い方は店のターゲット層だとは考えてなかったので、正直最初は戸惑いましたね。でも、皆さん本当に楽しそうに過ごされているので、今はこれでよかったと思っています。

Q2:現在、どのような活動をされていますか?

飲食物だけでなく、イラストレーターさんと一緒に服やグッズ、ステッカーを作ったり、SNS好きな世代の方が気分が上がるような体験、時間を提供したいとお店作りにも力を入れています。最近も、テーブルになんとなくかわいいなと買った水玉柄のクロスをかけたらSNSでバズって、急に一番人気の席になったことがありました。「この席を待ってもいいですか?」と他の席が空いているのに、席を待ってくれるお客様がたくさんいらっしゃいました。
他にも、「この鏡ありますか?」とスマホ画面を見せながら尋ねてくるお客さんもいますね。可愛い鏡の写真を撮るために、わざわざ遠くから電車に乗って来てくれるんです。私は自分のことをコーヒー屋だと思い込んでいたので、こういうセンスの部分が来店動機になるとは考えてもいませんでした。
でもこういうお客様たちこそ、素の私のセンスに共感していただけるので本当に感謝しています。「アーティスティック」という、昔はコンプレックスだったことが今では武器になっているように、長所と短所は表裏一体で、今はプラスの方向に活かせていると思います。お店をもっと大きくしたかったら、こんな気楽なことを言っていられないのかもしれませんが、今は「楽しい時間を提供したい」という自分の軸を大切にしていきたいと思っています。逆に、それができるなら「コーヒー」だけにこだわる必要もないのかもしれません。

Q3:今後、どのようなことをしていきたいですか?

次は、「お洒落なスナック」のようなお店にしていきたいです。 今の当店のお客さんは若い世代が多いこともあって、定型文なサービスしか受けたことがない方がほとんどだと思うんですね。「店員と最近行ったカフェについて話せる」というだけでも彼女たちにとっては新しい体験になるんじゃないかと思います。
ある従業員の女の子で、お客さんとすごくよく話す子がいました。最初は、「仕事中なのに」と私はモヤッとしてたんですが、彼女が接客したお客様はものすごい笑顔でお帰りになるんですよね。やはり楽しい会話や思い出って最強なんだなと思い直しました。せっかく小規模でやっているお店なので、柔軟に、お客様と距離近く楽しい時間を提供したいです。
「美味しくてお洒落で可愛いものがある」のが今のお店の姿だとしたら、そこに「店員さんとの会話も楽しい」という価値も提供していきたいと思っています。

Q4:活動を通して気づいたことや、伝えたいメッセージ、伝えたい相手はいますか?

今までお店をやってきて、自分の場合は「飲食店はこうあるべき」という思い込みから外れた方がうまく行くことに気がつきました。私たちらしさや好きなことを前面に出した方が多くの方に知ってもらえて愛されるし、それで共感してくださるお客様は本当に愛おしいです。
あと、窮屈さや生きにくさを感じている人たちに元気を与えられたら嬉しいです。
今の私のお店は、髪もラフで、夏は短パンだし、タトゥーもしている。でも、フォークを落としたらすぐ持ってきてくれて、顔をあげたらすぐに気がついてくれる。細やかな気配りやサービスは行き届いている飲食店って楽しいんだなって思えるサービスを通して、楽しい時間を提供していきたいです。
値段はチェーン店よりは高いかもしれないけれど、楽しいことがあると考えると、またこのお店を選んでくれると思うんです。美味しいお店も、お洒落なお店もいっぱいある中で、思い出を作れるような場所にしたいです。「思い出」って、最強ですよね。仕事とは、飲食店とは、そうやって今まで倣ってきたモノだけに囚われずに、進んでいきたいです。

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