PERSON 人を知る

島田穂隆さん
INTERVIEW

おいしいものを作る。こだわりの詰まった果物で、幸せな気持ちを

島田果樹園

島田穂隆 Shimada Hotaka

島田果樹園の紹介

三鷹市大沢にある果樹園。三鷹市名物のキウイやシャインマスカットなどのブドウ、はちみつを販売している。全て有機栽培で、果物の収穫期には対面販売も実施。三鷹市の青壮年部に所属、三鷹市の農業のPR活動にも参加しており、他県のブドウ農家とも積極的に交流している。

interview インタビュー

Q1:他者からどのようなイメージを持たれていると思いますか?

仕事仲間からは、「変わっている人」「こだわりがある人」と思われているかもしれません。自分自身でもそう思っている部分がありますし、「栽培や肥料に関する知識に独自理論を持っている」とか「仕事にまっすぐな人」と言われることもあります。果樹園のお客様からは、「キウイやブドウに愛がある人」と言ってもらえます。

Q2:その理由はなぜですか?

仕事をする中で「自分で考える癖」が身について、いろんなことを試して自分なりの育て方を研究してきたのが、「こだわりがある」と言われる理由でしょうか。
茨城県や山梨県など県外の畑に視察にも行くこともありますが、土地によって気候も土も全然違うので、同じことをやっても上手くいきません。「土地に合った方法を見つける」ことの大切さに気づき、それに気づいたことでおいしいブドウを作れるようになりました。
同じ三鷹市内でも、例えばここ大沢と牟礼で全く育て方が違います。おもしろいですよね。シンプルに「おいしくなるにはどうしたらいいか」を常に考えているので、それがお客様にも伝わっているのかもしれません。

Q3:自分自身では、自分のことをどんな人だと思いますか?また、自分が望む他者に与えたいイメージはありますか?

周りからの目線をあまり気にしないので、自分の気持ちに正直に行動できるタイプだと思います。自分の気持ちを隠す必要もないと思っているので、オープンなほうです。
お客様からは、「島田果樹園に来たら絶対においしいフルーツが買える!」と信頼してもらえるような仕事がしたいです。キウイやブドウが収穫できる秋には、畑の前で対面販売もしています。外食に行った時、イタリアンのお店で厨房の様子やシェフの顔が見えると安心するように、顔が見えることも大切だと思っています。「この人から買いたい」と思ってもらえたら嬉しいです。

島田穂隆さん

Love

Q1:現在「愛」が一番向いている関心ごとはなんですか?

やはりキウイとブドウでしょうか。「愛」と言っていいのか自分ではわかりませんが、「おいしいものを届けたい」という気持ちで毎日向き合っています。収穫時期は9月や10月ですが、畑に葉も茂っていないような今の時期も、剪定や、「粗皮(そひ)削り」といって、木の幹の皮を削る作業もあります。害虫予防の効果が期待でき、農薬を減らすことにもつながります。他にも、人間が腸内フローラが大事で免疫も上がるように、畑も収穫のない時期に土を育て、状態を良くしておくことが大事です。
気候も毎年変わりますが、「今年は寒かったから仕方ないね」と言われるのではなく、気候が変わっても変わらずおいしいものがお届けできるよう、収穫期以外も畑に向き合っています。

Q2:お仕事以外に、どんなことに夢中になってきましたか?

プライベートではゲームオタクなところもあります。一見、異ジャンルなものですが、ゲームで経験を積みながら攻略していく感覚は、実はブドウを育てるのと似ていると思っています。ボディメイクのジムに通っていた時も「植物と人間って同じなんだな」と自分なりに分析したこともありました。自分の体に合ったトレーニングをすると、ちょっとの工夫で結果が変わるのと同じで、ブドウもひと工夫することでおいしく作れるようになります。ジムで興味を持った栄養学の本を読んだ際にも、人間は歩いて移動をできるけれど、植物には腸がなくて微生物がいないから栄養をうまく吸収できない分、土に必要な栄養を与えてあげなくてはと考えるようになりました。好きなものにのめり込む時間を作るため、25歳の時にテレビを捨てました。割とストイックな一面もあるのかもしれません。

Q3:わざわざいう必要がない、自分の「こだわり」はありますか?

「どうやったらおいしいブドウができるようになるんだろう」と、仕事に関しては全てにこだわります。「一般的にはこう言われているけれど、実際どうなんだろう」と思ったら、自分でもトライしますね。
例えば、「水切り」といって水を極力与えないことで果物の糖度を上げる栽培方法があります。ただ、「それだと必要な栄養が行き届かないのではないか」と疑問を持ち、それよりアミノ酸やカルシウムなどを与えながら灌水を続けた方が、旨味や糖度の高い果物が作れるのではないかと試行錯誤しています。
土地によって育て方の正解は違うので、疑問に思ったら、自分で試すことも大切にしています。

Q4:キウイやブドウに関心を持ったきっかけはなんですか?

大学を中退し、やりたいことが分からず職を点々としていた時期に、農業をやっていた父親に声をかけられ、立川にある農林総合研究センターに通い始めました。最初はなんとなく通っていましたが、自分が作ったブドウを初めて食べて、「なんておいしいんだ」と衝撃を受けました。それまで果物が好きなわけでもなく、自分で果物を買ったこともなかったのに、本当においししかったんですよね。そこから一気に関心が湧いて、東京の「都市農業経営パワーアップ事業制度」を使ってハウスを作り、キウイやブドウを作り始めました。
「絶対に潰れない」と言われていたビニールハウスが大雪で潰れたり、最初は失敗ばかりしていましたが、だからこそ「自分の目で見たことを信じよう」と、信念を持って育て続けてこられました。

島田穂隆さん

Action

Q1:今までと、現在の活動を教えてください。

農業に携わり10年ほどになりますが、現在は三鷹市の大沢にある畑でブドウとキウイを育て、全国に発送したり対面販売もしています。畑で穫れたキウイやゆずを使い、ジャムも作っています。
友だちのお母さんが手が不自由で、そんな人にも気軽に食べてもらいたいと思い、手が不自由な人にも食べてもらえるように皮ごと食べれる品種にも挑戦しています。将来的には、身体が不自由な方や、車椅子の方にもにもぶどう狩りを気軽に楽しんでもらえるように畑をフラットにしたいです。
また最近では、三鷹市の青壮年部で、三鷹市の農業のPR活動にも参加しています。「北多摩果樹研究会」という団体に入って、いろんな県の視察に行くきっかけももらいました。他県のブドウ農家の方と交流することで、自分のブドウを客観的に見ることができて、「どうしたらもっと良くなるのか」に挑戦し続けています。

Q2:三鷹市のPR活動を通してメッセージを伝えたい相手はいますか?

都内に住むみなさんには、「東京に畑があってよかった」と思ってもらいたいです。三鷹市の農業は「都市農業(※)」と呼ばれ、畑があること自体珍しいと感じる方も多いかもしれませんが、都会だからこそ、畑があるっておもしろいと思うんです。都市農業の必要性を広めるために、自分自身も外に出て地域活動に参加していきたいと思っています。
身近な地域のみなさんを大切にしながら、最終的には三鷹から海外にキウイやブドウを発送して世界中の人に届けていきたいという野望もあります。

※都市農業:市街地及びその周辺の地域において行われる農業のこと。消費地に近いという利点を生かし、新鮮な農産物の供給や農業体験の場の提供の他、災害に備えたオープンスペースの確保などの役割も担う。

Q3:今後、どのようなことをしていきたいですか?

地域で活動をする中で、「まちなか農家さん」や、「 NPO法人のサラダボウルさん」との繋がりで「フードバンク」にも興味を持ち始めました。
今、コロナの影響で食べたいものを食べれない方がいます。特に子どもが困っているのをなんとかしたくて、何か自分にもできることがないか考えています。毎年11月に三鷹市農業祭をしていて、野菜船を作って宝分けする文化がありますが、もう少し違った形で提供したりすることもできるんじゃないかなとか、寄付するための野菜を育ててみてもいいかもしれません。本当に必要としてくれて、喜んでくれる人に届けていきたいです。

Q4:活動を続けることでメッセージを伝えたい相手にどのようにハッピーになってもらいたいですか?

食べてくださった方が、おいしくて幸せな気持ちなれるものを作っていきたいです。有名なフルーツ屋さんもたくさんありますが、「ここのブドウ本当に美味しかった」と果物の味を褒めてもらえると嬉しいですね。
また果物は、お見舞いや贈り物にも使われるものです。以前、入院していた方が島田果樹園のブドウを食べて、「死ぬ前に食べれてよかった」と話してくださったエピソードを聞きました。その時改めて、「果樹園をやっていてよかった、これからも、もっともっとおいしいものを作ろう」と心に誓いました。これからも「おいしいものを作る」ために妥協せず、仕事に向き合っていきたいです。

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